ゲノム編集とはDNAを直接書き換えることができる技術です。似たような技術に遺伝子組換え技術があります。
ゲノムを例えるならば、生き物の部品の設計図である遺伝子の情報がたくさんのった本です。
ゲノム編集や遺伝子組換えでは、どちらもゲノムという本の内容を書き換えて、生き物の特徴を変えることができます。
ではゲノム編集や遺伝子組換えは何が違うのでしょうか?
ゲノム編集と遺伝子組換えは似たような技術ですが違いもたくさんあります。
今回はこの違いをまとめてみようと思います。
ゲノム編集と遺伝子組換えの違い
どれくらいの効率でゲノムが書き換わるのか?
遺伝子組換えの成功率は一般的にとても低いです。そのため遺伝子組換えがうまく行った個体を選び出すのはとても大変です。そのため目印になる遺伝子も同時にゲノムに組み込む場合が多いです。この目印になる遺伝子には生き物を殺す薬剤に耐性を持たせることができる遺伝子(薬剤耐性遺伝子)を使います。遺伝子組換えがうまく行くと入れたい遺伝子と薬剤耐性遺伝子が一緒にゲノムに入ります。薬剤で与えると、遺伝子組換えが起こっていないものは死んでしまうので効率よく成功したものだけを選び出すことができます。
一方でゲノム編集は高い確率で成功します。そのため薬剤耐性遺伝子を一緒に入れる必要はありません。
生まれる生き物は自然界にいるものと同じか?
遺伝子組換えで生まれてくる生き物は、選びだすために必要な薬剤耐性遺伝子を持っています。この遺伝子は特殊な遺伝子で多くの種はこの遺伝子は持っていません。このため薬剤耐性遺伝子が入った遺伝子組換え生物は他の生き物の遺伝子を持った生き物になります。このような生き物は基本的に自然界では生まれることはない生き物です。
一方でゲノム編集で生み出される生き物は自然界で突然変異によって生まれた生き物と区別できないものもあります。自然界でもDNAが切断されることはあります。この時、細胞の中にはこの切られたDNAを修復するメカニズムが存在するため大抵の場合は元どおりになりますが、まれにうまく修復できないことがあります。これによって突然変異が起きます。DNAをきる原因は違いますが、修復の仕方や起こった変異の種類は自然界と同じです。そのため自然界で生まれた突然変異体と区別ができません。
ゲノムをどれくらいのスケールで書き換えられるか?
ゲノム編集ではゲノムをもっとも細かいスケールである塩基のレベルから改変できます。塩基とはゲノムの情報を記録している文字のことです。この塩基が数千文字集まって1つの遺伝子の情報を記録しています。
遺伝子組換えでは遺伝子の大きさのレベルである、数千塩基のスケールでゲノムを書き換えます。
つまり ゲノム編集の方がより細かい遺伝子の書き換えが可能です。
ゲノム編集と遺伝子組換えの共通点
ここまでゲノム編集と遺伝子組換えの違いを紹介してきました。しかしこの2つの技術には共通点もあります。
生き物の設計図を改変している
ゲノム編集も遺伝子組換えも人の手でゲノムの情報を変える技術です。ゲノムが変わることで生き物の特徴(表現型)を変えることができます。
このことにより研究の分野では遺伝子の働きを調べたり、農業ではおいしく育てやすい作物を開発することができます。
従来の品種改良より圧倒的に早くいい特徴を持った生き物を作り出せる
遺伝子組換えやゲノム編集を使えば、従来の品種改良では何年もかけて行なっていたことが数年、最短なら数か月で行えます。かなりの時間を節約することができます。
生産面では画期的な技術の進歩なのですが、遺伝子組換えで作り出された生き物を食べることに抵抗を感じる人は多いです。
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