iPS細胞とES細胞のちがい

バイオテクノロジー
Photo by Drew Hays on Unsplash

万能細胞が再生医療の可能性を広げるとして注目を集めています。iPS細胞がちやほやされていますが、ES細胞もあります。同じ万能細胞でも何が違うのでしょうか?今回はその違いを解説していこうと思います。

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一番の違い

まず結論から言うと、一番大きな違いはどんな種類の細胞から作られるかということです。

iPS細胞は普通の細胞から作られます。皮膚の細胞でも血液の細胞でもiPS細胞にすることができます。

一方でES細胞は胚の細胞から作られます。胚の細胞は増殖してそれぞれ個性化(分化)していくことでひとつの個体を作り出す可能性を秘めている特別な細胞です。

ES細胞を作るためにはこのような特別な細胞が必要でしたが、iPS細胞では体のどの細胞からでも万能細胞を作り出せることを可能にしました。

このことはとても画期的なことです。だからこそ山中伸弥さんはノーベル賞を受賞することになりました。

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そもそもiPS細胞とは

iPS細胞の作り方

iPSという名前は、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)という正式名称から来ています。

普通の細胞はそれぞれ個性を持っています。皮膚の細胞は皮膚の細胞で、血液の細胞は血液の細胞です。ある日突然皮膚の細胞が血液の細胞になることはありません。

受精卵から胚を経て細胞分裂を続けていくどこかの地点で血液と皮膚の細胞になることが決まりそれぞれ細胞の個性が決まります。個性が決まると同時にいろいろな細胞になれるという多能性は失われてしまいます。

iPS細胞ではこの一度失われた多能性を無理やり引き出します。これを細胞の初期化と言います。

具体的には、人工的に万能性を引き出すために体細胞に数種類の遺伝子を導入します。

初めて山中伸弥さんがiPS細胞を作った時は、4種類の遺伝子をマウスの皮膚の細胞に入れることで多能性を持った幹細胞が作られました。

iPS細胞の特性

iPS細胞には多能性があります。

これは普通の細胞にない特別な性質で、将来いろいろな種類の細胞になる可能性を秘めているという性質です。

この性質を用いて再生医療に応用することが研究されています。iPS細胞を用いた治療のモデルを紹介しましょう。

まず患者から細胞を採取して、初期化することでiPS細胞を作り出します。そのあと患者が求めている種類の細胞に育てて、患者に移植します。

iPS細胞を使うことで患者由来の細胞で病気やケガを治療することできるようになると考えられています。細胞が患者由来なので今までの臓器移植のように拒絶反応がおこらないと言われています。

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ではES細胞とは

iPS細胞のことがわかったところで、もう一方のES細胞について見ていきましょう。ES細胞の作り方とiPS細胞と同じ性質と違う性質について解説していきます。

ES細胞の作り方

はじめにも言いましたが、ES細胞はから作られます。

胚とは、受精卵が細胞分裂してできた細胞の塊です。

胚はもっと時間が経つと赤ちゃんになります。胚の細胞は将来体さまざまな部分をつくる細胞になります。つまり胚の細胞にはこれからいろいろな種類の細胞になる可能性、万能性を持った細胞なのです。

この胚から細胞をとり出して、この万能性を残しつつシャーレで培養したのがES細胞になります

ただ胚は生命の根源なので、それを壊してES細胞にすることには倫理的な問題があります。また患者の細胞ではないので患者に移植した時に拒絶反応がでる可能性があるという問題もあります。

胚から細胞をとり出して、この万能性を残しつつシャーレで培養したのがES細胞になります

ただ胚は生命の根源なので、それを壊してES細胞にすることには倫理的な問題があります。また患者の細胞ではないので、患者に移植した時に拒絶反応がでるという問題もあります。

クローンES細胞の作りかた

生命の根源である胚を使ってしまうことによって様々な問題があるので、胚を使わずにES細胞をつくる方法も開発されました。

卵から核をのぞいて、そこに体細胞の核を入れることで、人工的に胚を作りだすという技術です。

この技術によって作り出された胚は体細胞と同じゲノムを持っているため体細胞のクローンになります。

このような胚をクローン胚と言います。クローン胚から作られたES細胞はクローンES細胞と呼ばれ、体細胞を提供した人に戻しても免疫拒絶が起こらないことや新たな生命になるはずだった胚を使わなくていいことが良いところです。

しかしいくら胚を使っていないからといっても、そのもとになる卵を使っているため、倫理的問題は以前としてあります。

ES細胞のiPS細胞と同じ特性

ES細胞(クローンES細胞の含めて)はiPS細胞と同じく万能性があります。そのためES細胞からいろいろな種類の細胞を作りだし、患者に移植する再生医療への応用が期待されています。

ES細胞のiPS細胞と違う特性

一方でiPS細胞とは違う特性ですが、元になっている細胞が違います。ES細胞ではiPS細胞のように遺伝子導入によって細胞を初期化はしません。初期化している細胞を取ってきて培養したものがES細胞になります。

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まとめ

iPS細胞とES細胞の違いをまとめると

  • 元なっている細胞(体細胞 / 胚・クローン胚)
  • 遺伝子組換えで細胞初期化するか(する / しない)

再生医療の研究ではiPS細胞やES細胞をたくさん使っています。これらは再生医療の鍵になるので、これからもっと注目されて行くでしょう。

いつか万能細胞を使った治療が一般的になる日がくるかもしれません。

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