最近「ゲノム編集」という技術についてニュースで見ることが多くなりました。
この技術は画期的な発明でたくさんのメリットがあります。その反面、ゲノム編集の説明は専門用語が多くいまいちどんな技術なのか想像できないという人も多いと思います。
今回はゲノム編集についてなるべく簡単に!でもちゃんと詳しく解説していきたいと思います!
他の記事でゲノムや遺伝子についても解説しているのでわからなくなったらそちらも見てください。
ゲノム編集とは?
ゲノム編集は生命の設計図であるゲノムを書き換えることで今までになかった特徴を持つ生き物を作り出すことができる技術です。
似たような技術に遺伝子組換えがありますが、目的は同じです。
しかしゲノム編集の方法は遺伝子組換えとは違っています。
ゲノム編集では、ゲノムを書き換えるためにDNAを切る酵素でゲノムのねらったところを切り、間違った修正を起こさせたり、新しい遺伝情報を入れたりします。
ゲノム編集の大きな特徴は、ゲノムのねらったところにメスを入れる感じで、ゲノムの中から好きな場所を選んで直接編集できるということです。
ねらったところを切るために。切りたいDNAを見つける方法
ゲノム編集の最大の特徴はねらったDNAを切るというところです。
ゲノム編集にはいくつかの方法がありますが、現在主流のCrisper/Cas9システムではRNA(DNAと同様に塩基配列を持つ物質)を使ってゲノムDNAのねらったところに酵素を誘導します。DNAとRNAはおたがいの塩基配列の組み合わせがうまく合うとパズルのピースのようにぴったりとくっつくきます。こうすることでDNAをきる酵素を正確に切りたい場所まで運んでいくことができるのです。
なるべく自由にゲノムDNAの配列を指定できるように、現在もCrisper/Cas9システムについて研究が進められています。
切れたDNAを修復する。この時のまちがいがポイント
DNAが切れたとき切れっぱなしの状態ではもともとあった遺伝子の情報が失われてしまいます。
私たちが日常的に生活していてもDNAの切断は起こっているのでそれを修復することも細胞内では日常的に起こっています。この修復がうまくいくと遺伝子の情報は元どおりになり、遺伝子の情報は切られる前と同じ状態に戻ります。
しかしまれにこの修復が間違ってしまうことがあります。この修復のまちがいが起こるとDNAの塩基が1つ抜けて、遺伝子が機能しなくなることがあります。こうすることで今までにない特徴を持った生き物を作りだすことができます。
修復のまちがいは、人工的に作った塩基配列を入れることもできます。このタイプの修復のまちがいを使えば、遺伝子組換えのように全く別の生き物の遺伝情報を入れることも可能になります。
ゲノムの役割と編集したことの効果
ゲノムとは全ての遺伝子の情報の集合のことをさします。
遺伝子は生き物のパーツの設計図なので、ゲノムを編集し遺伝子が持つ情報を操作することは生き物の特徴に影響します。
ロボットにおきかえて考えてみましょう。例えば足と胴体をつなぐパーツがなくなったとしましょう。そうすると歩けないロボットができあがります。これはあまり実用的とは言えませんね。でもモーターが強すぎて動きが早すぎるロボットに対して、モーターの働きを弱めるようにパーツを設計しなおすとほどよい早さで動いてくれるロボットができあがります。
このようにパーツの設計図をなくしたり書き直したりすることは全体の性能に影響を与えます。生き物でも同じように生き物のパーツの設計図である遺伝子の情報が書きかわるとその生き物の体や特徴に影響がでます。ロボットの足と胴体をつなぐパーツがなくなったように、遺伝子をなくす操作をすると生き物にとっていいとは言えない影響がでる時もありますが、食べ物や研究にとってとても役に立つ特徴を生き物に持たせることもできます。
生き物の中には遺伝子はたくさんあり、同じような働きをするようなものがあったり、互いにその働きを制御しあったりしています。遺伝子をなくすと生き物が死んでしまったり、体に重い問題を持った生き物ができてしまうという想像をする人が多いと思います。
しかし遺伝子同士の働きを理解して適切に選んで壊せば、いい機能を持った生き物を作り出すことができます。
ゲノム編集の応用
ゲノム編集によって、どんな生き物を作り出すのかは分野によって様々です。
農業の分野ではより美味しい野菜を作ったり、病気に強い作物を作ったりします。
医療の分野では遺伝子の病気を持った人を治療することができます(ただし倫理上の問題があるので実施できるかは別問題です)。
また研究の分野では遺伝子の機能を調べるために遺伝子を壊すために使われます。
ゲノムを編集すると、いろいろな分野で役にたつ生き物を作り出すことができます。
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