生物学的製剤・バイオ医薬品とは?

バイオテクノロジー

生物学的製剤やバイオ医薬品という言葉を知っていますか?従来の医薬品とは違う薬として注目されています。今回はこの生物学的製剤・バイオ医薬品とは何か、従来の医薬品と何が違うのかを解説していきたいと思います!

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生物学的製剤・バイオ医薬品とは

生物学的製剤(バイオ医薬品)とは、生物に物質を作らせ、それを集めて利用する薬のことです。従来の人工的に、化学的に、合成した化学物質とは薬の作り方や特性が異なっています。昔から医療に使われていた血清も広い意味での生物学的製剤の1つですが、生物学的製剤というとバイオテクノロジーを使って作られた薬のことを指す場合が多いです。バイオテクノロジーで作られた薬は今までの薬とは違った特徴を持っているため、これまで治療することができなかった病気にも効く薬として注目されています。

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生物学的製剤の有効成分はタンパク質

生物学的製剤とは、主にタンパク質を成分とした薬です。タンパク質とは生き物が細胞の中で自ら作りだす分子の1つです。タンパク質は今までの医薬品のような化学物質に比べるととても大きな分子で、その立体構造は複雑です

薬の分子の大きさはかなり違っています。生物学的製剤は、従来の薬の10倍から1000倍ほどの大きさです。

体の中にあるタンパク質にはたくさんの種類があり、それぞれ立体構造が決まっています。タンパク質は複雑な立体構造を持っていることによって正確に物質を見分けることができます。鍵と鍵穴の関係のように形を合わせることで、自分の形にあう物質を認識することができます。その特性を生かして体の中では様々なシグナルの伝達をタンパク質がになっています。

タンパク質を用いた生物学製剤には大きく分けて2つの働きがあります。

  • 体の中で足りなくなったタンパク質を投与すること
  • 病気の原因となる物質を認識するタンパク質を投与してその物質の働きを抑えること

病気の中には必要なタンパク質が足りなくなったために起こるものがあります。その場合の治療法としてその足りなくなったタンパク質を薬として補ってやると、症状が解消されます。

またタンパク質が自分の構造を利用して物質を認識することができるということを利用して、病気の原因となる物質を狙ってその働きを抑えるという治療法もあります。

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バイオテクノロジーで薬を作る

なぜ生き物に薬を作らせるのか?

従来の薬の多くは工場で化学物質を混ぜ合わせて作られていますが、この方法で大きなタンパク質の分子を作ることは実質的に不可能です。しかし生き物は常日頃から細胞の中でタンパク質を合成しています。そこでタンパク質合成がお得意な生き物たちに薬として利用できるタンパク質を合成してもらおうというお話です。

遺伝子組換えで生き物に欲しいタンパク質を作ってもらう

タンパク質は複雑な構造をしていますが、その構造の情報は遺伝子に書き込まれています。遺伝子はタンパク質の設計図ということもできます。その設計図を生き物に持たせてやれば、生き物はそのタンパク質を作ってくれるようになります。遺伝子を生き物に渡すという技術が遺伝子組換えです。遺伝子を持たせる相手は大腸菌や動物細胞、酵母になります。これらの細胞に遺伝子を導入したら、細胞を増やします。十分に増やすことができたら、タンパク質を抽出して、精製します。精製されたタンパク質を薬として利用しています。

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治療できる病気は?

生物学的製剤で治療できる病気はたくさんあります。ここでは糖尿病と関節リウマチの生物学的製剤について紹介しようと思います。

糖尿病

糖尿病は代表的な生活習慣病で、血液中の糖分の濃度が過剰になってしまう病気です。健康な人ではインスリンというタンパク質が血液から糖分を吸収させるためのシグナルとして血液中の糖分が高くなると体中に放出されるます。細胞はインスリンを受け取ると細胞の中に糖分を取り込みます。しかし糖尿病の患者の中にはこのインスリンを十分に作ることができない人がいます。そのような人は血液から糖分を取り込みにくくなってしまっています。そのような人には生物学的製剤として作られたインスリンを投与することで血液中の糖分を吸収を促してやります。インスリンは体の中で足りなくなったタンパク質を投与するタイプの生物学的製剤です。

関節リウマチ

生物学的製剤の1つであるアダリムマブ(ヒュミラ)はリウマチの治療薬として使われています。こちらは、病気の原因となる物質を認識するタンパク質を投与してその物質の働きを抑えるタイプの薬です。関節リウマチでは関節で炎症の原因となる物質(TNF-α)が大量に作られることで痛みが引き起こされます。アダリムマブはタンパク質の一種でこの炎症の原因となる物質を認識して結合することで、炎症を弱めます。しかしこの炎症の原因になる物質は免疫に関わっているため、免疫の働きをよわめてしまうという副作用もあります。

アダリムマブは炎症の原因になるTNF-αに結合することで、TNF-αが免疫系の細胞にシグナルを伝達することを妨げます。こうすることで過度の免疫反応をブロックさせます。
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まとめ

生物学的調剤は今まで治療することが難しかった病気に対して効果のある薬として注目されています。それはタンパク質の特性を生かしたものが多いです。

今回は生物学的製剤の例としてインスリンとアダリムマブについて紹介しましたが、この他にもいくつか実際に治療に用いられているものもあります。

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