[遺伝子組換え]アグロバクテリウム法を解説!

バイオテクノロジー

アグロバクテリウム法とは、植物に行う遺伝子組換え技術の代表的なものです。この方法を理解することで遺伝子組換えとはなにをやっているのかを大まかに理解できます。そこで今回はアグロバクテリウム法をわかりやすく解説していこうと思います。

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アグロバクテリウム法とは?

アグロバクテリウム法とは、細菌であるアグロバクテリウムの性質を使って植物に自分が選んだ遺伝子を入れる方法のことです。植物では広く使われている遺伝子組換え技術の1つです。

アグロバクテリウムは植物に感染する病原菌です。アグロバクテリウムに感染された植物の茎にはクラウンゴールと呼ばれるこぶができます。これはアグロバクテリウムによって植物の細胞に遺伝子が送り込まれ、その遺伝子が働いて細胞分裂が異常に起こってしまうのが原因です。

一見すると植物の厄介者ですが、「遺伝子を送り込む」という能力はかなりすごいものです。研究者たちは、この能力に目をつけ、人工的に生き物に遺伝子を導入するという方法を作り出しました。これがアグロバクテリウム法です。

アグロバクテリウムは植物にとっては悪い細菌
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アグロバクテリウムの性質

そもそもアグロバクテリウムはどうやって遺伝子を自分から感染した植物に送り込むのでしょうか?

これにはT-DNA領域Vir遺伝子群が関わってきます。どちらもアグロバクテリウムの持っているDNA(Ti プラスミド)に含まれます。

T-DNA領域はアグロバクテリウムから植物に移されるDNA領域のこと。T-DNAは2つの境界配列と呼ばれるDNAの塩基配列によって挟まれた配列で、中身はなんであってもアグロバクテリウムから植物に移されます。

一方、Vir遺伝子群はT-DNAの運び屋です。T-DNAを移動させる時に働きます。T-DNA領域を切り出すタンパク質や植物細胞に運ぶタンパク質などを記録している遺伝子がVir遺伝子群です。

アグロバクテリウムはT-DNA領域に植物ホルモンを作る遺伝子とアグロバクテリウムの食料となるオパインを作る遺伝子を押せて植物の細胞に送り込みます。植物ホルモンは植物の成長に関わる物質です。アグロバクテリウムが感染した細胞では植物ホルモンが過剰に作られてしまうため、細胞分裂が止まらずこぶ状に膨らんでしまいます。この細胞塊がクラウンゴールです。オパインはアグロバクテリウムの食料です。これを植物の細胞の中でたくさん作らせることで植物の資源を横取りします。

ちなみにアグロバクテリウムではなくアグロバクテリアという表記も見られますが、どちらでもOKです。アグロバクテリア(Agrobacteria)は複数形でアグロバクテリウム(Agrobacterium)は単数形という違いです。日本語で使う分には特に大きな違いはありません。

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遺伝子組換え技術へ応用

さて野生のアグロバクテリウムの性質を理解できたところで遺伝子組換えに応用する方法を解説していきます。アグロバクテリウム法に限らず、遺伝子組換え生物を作りだすためには以下の3つのステップが必要になります。

  1. 遺伝子を染色体に入れる
  2. 遺伝子組換えが起こった細胞を選ぶ
  3. 遺伝子組換えが起こった細胞から個体を再生する

順番にアグロバクテリウム法ではどうやっているのかをみていきましょう。

ステップ1: アグロバクテリウムで導入したい遺伝子を植物細胞の染色体に入れる

アグロバクテリウムの性質はここの手順、遺伝子を染色体に入れるという操作に大きく関わってきます。

遺伝子組換えを起こすためにT-DNA領域に導入したい遺伝子を書き込んでおきます。野生のアグロバクテリウムには植物にとって害になる遺伝子が入っているのでこれを除いて、自分が植物に導入したい遺伝子を代わりに入れます。T-DNAの中身さえ変えてしまえば、あとはアグロバクテリウムがうまくやってくれます。

植物からとってきた細胞を培養しているところにアグロバクテリウムを感染させてやれば、Vir遺伝子群が働きだし、染色体のどこかに導入したい遺伝子を持ったT-DNAを挿入してくれます。

遺伝子組換え用のTiプラスミドは、T-DNA領域内に導入したい遺伝子と選抜マーカーを入れる。

ステップ2: 遺伝子組換えが成功した細胞を選びだす

遺伝子組換えはとても低確率でおきます。1つ1つチェックしていたらとても時間がかかってしまい、大変です。そこで簡単に遺伝子組換えが起こった個体を選別するために選抜マーカーという遺伝子もT-DNA領域に入れておきます

選抜マーカーには薬剤耐性遺伝子が使われることが多いです。この遺伝子があると毒を盛られても生き残ることができるので簡単に遺伝子組換えが起こって個体を見つけることができます。アグロバクテリウムを感染させた後に生物にとって毒になる薬剤をまいて遺伝子組換えが起こらなかった細胞を殺して、遺伝子組換えが起こった細胞だけを選び出すことができます。

ステップ3: 個体を再生する

植物の性質として1つの細胞から体全体を作りだすことは比較的簡単です。

先ほど植物ホルモンがクランゴールを作るというお話をしました。植物ホルモンは植物の成長をコントールする物質です。植物ホルモンの種類と量をうまく調整して植物に与えると思い通りに成長されることができます。植物を1個の細胞から全ての細胞が遺伝子組換えされた植物を作るなんてこともできます!この方法を使って遺伝子組換えが起こった細胞から植物の体全体を作りだします

このようなステップをふむことによって全身の細胞に遺伝子組換えが施された植物が生まれます。

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まとめ

アグロバクテリウム法

アグロバクテリウムの性質を使って植物に自分が選んだ遺伝子を入れる方法。その手順は以下の通り。

  1. T-DNAを改変したアグロバクテリウムで導入したい遺伝子を植物細胞の染色体に入れる
  2. 選択マーカー(薬剤耐性遺伝子)遺伝子組換えが成功した細胞を選びだす
  3. 植物ホルモンで個体を再生する

アグロバクテリウム法以外にも遺伝子組換えを起こす方法はたくさんあります。今回は植物で代表的な方法としてアグロバクテリウム法を紹介しました!具体的にはここに書いた以外にもいろいろな操作をしています(大腸菌でプラスミドを増やしたり、いろいろな種類の植物ホルモンをタイミングを変えて加えたり…)。簡単に説明するために書いていない操作があるのでご注意ください。

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