DNAの二本鎖のうちどっちがセンス鎖で、どっちがアンチセンス鎖かわからなくなったことはありませんか?さらに鋳型鎖という言葉まで出てきてもう頭はパニック。私もそのような状態になったことがあります。そこで今回はセンス鎖、アンチセンス鎖そして鋳型鎖をまとめて解説したいと思います!
センス鎖とアンチセンス鎖の違い
遺伝子が書き込まれているDNAの二本鎖にはセンス鎖とアンチセンス鎖があります。
センス(sence)とは英語で「意味」という言葉です。センス鎖には文字通りちゃんとした意味のある塩基配列が乗っています。ここでいう意味とは遺伝子の情報のことです。
一方でアンチセンス鎖は、ざっくりいうとセンス鎖にくっついているおまけの鎖です。
DNAは2本の鎖がくっついて1本になったものです。DNAの塩基には種類ごとに結合できる塩基が決まっているので、センス鎖の塩基配列が決まってしまえば自動的にアンチセンス鎖の配列は決まります。一般的にセンス鎖のように意味のある配列ではありません。
- センス鎖:遺伝子の情報が書き込まれている鎖
- アンチセンス鎖:センス鎖とくっつくおまけの鎖
センス鎖とアンチセンス鎖の見分け方
センス鎖とアンチセンス鎖を見分ける上で 一番重要なポイントは、転写の時に鋳型になるのがアンチセンス鎖ということです。
転写するときは、
鋳型鎖=アンチセンス鎖
DNAを複製する時やDNAからRNAを合成するときは、もともとあった鎖に結合することができるヌクレオチドをつないでいくことで新しい鎖を合成します。この合成のしかたが型にものを流し込んで作るようであるため、もともとあった鎖の方を鋳型と言います。
遺伝子が発現する(RNAが合成される)ときの鋳型はアンチセンス鎖になります。RNAポリメラーゼがアンチセンス鎖を読み取って、アンチセンス鎖にくっつくことができるRNAを合成していくので、作られたRNAはセンス鎖と同じ配列になります。ただしDNAのチミンという塩基はRNAではウラシルになります。
合わせて考えてほしいのが読み取りと合成の方向です。
DNAやRNAの鎖1本1本には方向があります。片方の端が5'末端でもう片方を3'末端と言います。5'側から3'側にヌクレオチドが繋がっていきRNAが合成されます。そのためRNAを合成していくためには、鋳型鎖を3'側から5'側に読み取っていきます。
始まるのが3? 5?
ごちゃごちゃしてますね。混乱しがちなので整理しておきましょう。
鋳型鎖(アンチセンス鎖)は3'側から5'側に読み取られる
RNAは5'から3'へ合成される(伸長する)
遺伝子が書き込まれている方向はばらばら
センス鎖とアンチセンス鎖の話をしてきましたが、これは転写されているDNAの一部の領域だけを見て判断しているものです。
染色体は二本鎖によって構成されていますが、「染色体のすべての領域で同じ1本の鎖がセンス鎖で、もう片方がアンチセンス鎖」という話ではありません。
なぜならDNAにのっている遺伝子の方向はバラバラだからです。
ある遺伝子でセンス鎖だった方が、同じ染色体上の他の遺伝子でもセンス鎖というわけではないので注意しておきましょう。
DNA複製で出てくる〇〇鎖
遺伝子発現の話からはそれてしまいますが、DNA複製についても話しておこうと思います。
DNA複製の分野では、センス鎖やアンチセンス鎖という言葉は出てきません。
鋳型鎖ということばは出てくるので、遺伝子発現のときと比較しておきましょう。
遺伝子発現の時はDNAのうち片方の鎖が鋳型鎖になりましたが、DNA複製では両方の鎖が鋳型鎖になります。
古い鎖を鋳型にして新しいDNAの鎖を合成していきます。
まとめ
センス鎖、アンチセンス鎖、そして鋳型鎖について解説しましたが、まとめると
- センス鎖 = 遺伝子の情報が書き込まれている鎖
- アンチセンス鎖 = センス鎖とくっつくおまけの鎖
- 鋳型鎖 = DNAやRNA合成の鋳型になる鎖
遺伝子発現のときは、
鋳型鎖 = アンチセンス鎖
センス鎖とアンチセンス鎖は遺伝子発現に関わる用語です。
DNA複製では古いDNAの2本の鎖がそれぞれ鋳型になって新しい鎖が合成されます。
この分野の問題はテストや入試でよく出るのでまとめておきました。
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