進化とは?自然選択と突然変異について詳しく解説!

生物学

進化とは何か。

意外にも多くの人がよく理解していないのが進化の概念です。

実はポケモンの進化は生物学的には正しくありません。

僕も高校生のときは進化についてなんとなく理解していました。しっかり理解したのは大学に入って勉強してからです。

進化は、生物学の中でとても重要な概念です。なぜならこの世界の生き物を作り出したプロセスが進化だからです。動物、植物、細菌などなど……この地球上にはとても多様な生き物が存在します。それら全ては進化というプロセスによって同じ祖先から長い年月を経て生み出されてきたと考えられます。

今回は、生物学的な進化の概念について解説していこうと思います。

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進化とはプロセスである

進化とは、世代を経るごとに集団内に起こる遺伝的な変化のことです。

キーになるのは世代を経るということです。つまり世代をまたいだ変化でなければ進化といいません。

進化には2つの大きな要因があります。それは自然選択突然変異です。

自然選択は遺伝的変異がどうやって固定されるのかを、突然変異はその遺伝的変異がどのように作られるのかを説明しています。

自然選択

自然選択とは、生き物が下の3つの条件を満たした時に起こるプロセスで、生存や生殖に有利な遺伝的形質を持った個体が世代を経るごとに増加します。

  • 形質が個体間で違う(変異がある)
  • 形質は遺伝する
  • 形質によって生存や生殖に差が生じる

形質とは生き物の特徴のことです。体の形や体の色、ストレスへの耐性など様々な特徴を形質と呼びます。個体とは生き物1匹のことをさします。

具体的に考えていきましょう。

山にネズミがいます。このネズミには遺伝子Aと遺伝子aがあり、個体はどちらか片方のみを持っています。遺伝子Aを持った個体は視力がいいという形質をもち、遺伝子aを持った個体は視力が劣っています。

山にはそのネズミを食べる天敵がいるので、いち早く天敵が近づいてくることに気づかなくてはいけません。

この時、視力がいい個体はいち早く天敵の襲来に気づけるため、近くに天敵がくる前に逃げることができますが、視力が良くない個体は天敵が近づいてくることに気づきにくいため天敵に狙われやすいです。

遺伝子Aを持った個体は遺伝子aを持った個体より視力が良くなるので天敵から逃げることができる確率は高いです。そのため遺伝子Aを持った個体は生き残りやすく、遺伝子Aは次世代に引き継がれやすくなります。

この時の状況を先ほど出した3つの条件に当てはめてみましょう。

  • 形質が個体間で違う(変異がある)=視力がいい個体と視力が悪い個体がいる
  • 形質は遺伝する=視力がいい個体は遺伝子Aをもち、視力が悪いの個体は遺伝子aをもつ
  • 形質によって生存や生殖に差が生じる=視力がいい個体が生き残りやすい

このような状況が続けば、どんどん視力の悪い個体が天敵に食べられていき、視力のいい個体がの割合が増えていきます。これが自然選択の結果です。

このようにして有利な形質をつくる遺伝子の割合は増えていき、生き物は環境にあった形に進化していきます。

突然変異

形質の違いは遺伝子の違いから生まれるということでしたが、その遺伝子の違いは何から生まれるのでしょうか?

この遺伝子の違いは遺伝子の突然変異によって生まれます。

遺伝子は親から子に受け継がれていきますが、このとき全く同じになるように正確には受け継がれていきません。ほんのわずかですが間違い(突然変異)が生じることがあります。このわずかな間違いによって新しい遺伝子が生まれます。

先ほどの例で考えてみましょう。

眼を作る遺伝子aは従来からこのネズミが持っていた目をつくる遺伝子です。そこに突然変異が起こって遺伝子Aが生まれました。この新しい遺伝子Aは従来の遺伝子aが作り出す眼よりも遠くまで見渡せる眼をつくることができます。

新たな遺伝子を持ったこの突然変異はとても低い確率で偶然起こります。この新しい遺伝子を持った個体は同じ年に生まれてくる個体の中でも低確率です。

今回は遺伝子の突然変異によって視力が良くなる例を出しましたが、必ずしも突然変異によって生まれる遺伝子が従来の遺伝子より生存や生殖に有利なものであるわけではありません

突然変異によっては機能が下がったり、個体が正常に生まれてこないような変異を生じることもあります。

突然変異が起こる確率はわずかですが、このわずかな間違いが進化の原動力なのです。

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進化に対する勘違い

ポケモンの進化は生物学的ではない

ポケモンはレベルアップや道具を使うことで進化しますが、生物学的には進化には当てはまりません。

なぜなら生物学的な進化は、世代を経た変化のことをさすからです。

ポケモンのように1つの個体が成長とともに姿形が大きく変わるという現象を、生物学的には「変態」と言います。アゲハチョウの幼虫がさなぎを経て蝶になるような変化もこの変態という現象に当たります。

進化には目的はない

生き物の驚くべき能力をきくと、あたかもそれが何かの目的によって作られたかのように錯覚してしまうことがあります。しかし進化に目的があると考えるのは間違いです。

例えばペンギンは泳ぐのに特化した体を持っています。そのかわり鳥でありながら飛ぶことはできません。

このような話に対して、ペンギンは泳ぐために進化したという解釈は間違いです。あくまでペンギンの祖先の中で泳ぐことができた個体が生き残りやすかったため、泳ぐことに関する遺伝子が選択されて、今のペンギンの姿に進化したと考えるのが正しい解釈です。

進化の道筋について考えるときは進化は目的を持って起こらないということを頭の片隅においておきましょう

退化は進化の反対ではない

生物学的には退化という概念はありません。なぜなら世代を経た遺伝的な変化を進化とよんでいるため、仮に能力が落ちたとしてもそれは進化だからです。

退化と一般に考えられているものの中には、その生き物の生活に必要なくなった遺伝子が、突然変異の蓄積によって機能が失われたというものがあります。

モグラを例に考えてみましょう。モグラはほとんど目が見えません。もともと祖先の段階ではちゃんと視力があったのですが、地中の生活をすることで目が見えなくなったと考えられています。

自然選択では生存や生殖に不利な遺伝子を持った個体が除去されます。光がある地上で生活していると目が見えることは生存にとても重要です。天敵が近づいてくることや獲物との距離感を掴めないのは生きる上でとても不利になります。

しかし光がない地中では視力は重要ではなくなります。そのため目を作る遺伝子を選択するという自然選択が起こらなくなるので、突然変異によって目を作る遺伝子が働かなくなったとしてもそのまま残り続けます。

このように、正常に目を作る遺伝子が選択されなくなったためにモグラは目が見えなくなったと考えられます。

自然選択の基準は環境によって大きく異なります。
なので生き物はそれぞれの生活にあった姿形になっていきます
たとえそれが能力の退化に見えたとしても、生物学的には進化なのです。

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まとめ

進化とは、世代を経るごとに集団内に起こる遺伝的な変化のことです。

突然変異によって遺伝的変異がつくられ、
自然選択によって遺伝的変異が固定されます

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参考文献

  • Neil A. Campbell, Jane B. Reece, Lisa A. Urry, Michael L. Cain, Stevan A. Wasserman, Peter V. Minorsky, Robert B. Jackson "BIOLOGY A Global approach TENTH EDITION" PEARSON 2015

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